インターネットやスマホアプリ、会社のシステム。私たちが当たり前のように使っているITサービスは、目に見えない「土台」の上で動いています。この土台を支えているのが、インフラエンジニアと呼ばれる人たちです。
「インフラって何?」「エンジニアって難しそう…」
そう感じる方もいるかもしれませんね。
今回は、インフラエンジニアという仕事について、初めて知る方にも分かりやすく、その役割や仕事内容、そしてどんなやりがいがあるのかを解説していきます。
インフラエンジニアとは?
インフラエンジニアの「インフラ」とは、私たちが普段使っている電気やガス、水道のように、ITサービスを動かすために必要不可欠な基盤のことです。具体的には、主に以下の3つの要素を指します。
- サーバー: ウェブサイトのデータやメール、アプリの情報などを保管し、ユーザーからの要求に応じて提供するコンピューターです。例えるなら、お店の商品を保管し、注文に応じて提供する倉庫やお店のレジのような役割です。
- ネットワーク: サーバーとサーバー、サーバーとユーザーのパソコン・スマホなどをつなぐ情報の通り道です。インターネット回線やルーター、スイッチなどがこれにあたります。例えるなら、お店と倉庫をつなぐ道路や、商品を運ぶトラックの役割です。
- データベース: 顧客情報や商品データなど、大量の情報を整理して保存するデジタル版の引き出しのようなものです。いつでも必要な情報を取り出せるように管理しています。例えるなら、整理整頓された商品台帳や顧客名簿の役割です。
インフラエンジニアは、これらのITインフラを設計、構築、運用、保守することで、ITサービスが安定して動き続けるようにする、まさに縁の下の力持ちのような存在なのです。
インフラエンジニアの主な仕事内容
インフラエンジニアの仕事は多岐にわたりますが、大きく分けて4つのフェーズがあります。
1. 設計(要件定義・設計)
新しいシステムやサービスを作る時、まず最初に行うのが設計です。
- 要件定義: どんなシステムを作りたいのか、どれくらいの利用者がいるのか、どれくらいの速さが必要かといったお客様の要望をヒアリングし、必要なサーバーの数やスペック、ネットワークの構成などを具体的に決めていきます。まるで、家を建てる前に、どんな部屋が必要か、何人住むのかなどを決めるようなものです。
- 基本設計・詳細設計: 要件定義で決まった内容をもとに、どのようなサーバー、ネットワーク機器、データベースを使うのか、それらをどう配置し、どう接続するのかといった詳細な設計図を作成します。これは、家の設計図を具体的に描く作業に似ています。
2. 構築(セットアップ・インストール)
設計図に基づいて、実際にインフラを作り上げていくフェーズです。
- 機器の設置・配線: サーバー機器をデータセンターに設置したり、ネットワーク機器を接続したりと、物理的な作業を行います。
- OS・ソフトウェアのインストール: サーバーにWindows ServerやLinuxなどのOS(基本ソフト)をインストールし、Webサーバーやデータベースソフトなど、システムを動かすのに必要なソフトウェアを導入・設定します。
- ネットワーク設定: ルーターやスイッチに設定を行い、情報の通り道が正しく機能するようにします。
3. 運用
構築されたインフラが、毎日問題なく動き続けるように管理する仕事です。
- 監視: システムが正常に動いているか、サーバーの負荷は高すぎないかなどを24時間体制で監視します。専用のツールを使って、異常がないか常にチェックしています。
- バックアップ: 万が一のトラブルに備えて、重要なデータが失われないように定期的にバックアップを取ります。
- 性能管理: システムの応答速度が遅くなっていないか、より快適に使えるように改善できないかなどを分析し、必要に応じて設定を変更したり、機器を増強したりします。
4. 保守(トラブル対応・メンテナンス)
システムに問題が発生した時に、それを解決したり、問題が起きないように予防したりする仕事です。
- 障害対応: システムが停止したり、動きがおかしくなったりした時に、原因を特定し、復旧させます。これは、ITシステムにおける救急隊員のような役割です。
- アップデート・メンテナンス: サーバーのOSやソフトウェアのバージョンアップ、セキュリティパッチの適用などを行い、常に最新の状態を保ち、脆弱性を解消します。
- 問い合わせ対応: システム利用者からの「なぜか繋がらない」「この操作ができない」といった問い合わせに対応し、解決策を提供します。
インフラエンジニアのやりがいと大変なこと
やりがい
- 社会を支える実感: 私たちが普段使うウェブサービスやアプリ、企業の基幹システムなど、社会を動かすITの土台を自分が支えているという大きなやりがいを感じられます。
- 問題解決の達成感: 複雑なシステム障害を解決し、サービスを復旧させた時の達成感はひとしおです。
- 技術の進化を実感: クラウド技術の発展など、ITインフラの分野は常に進化しています。新しい技術を学び、それをシステムに導入していく面白さがあります。
- 需要の高さ: IT化が進む現代において、インフラエンジニアの需要は高く、専門スキルを身につければ、長く活躍できる職種です。
大変なこと
- 24時間体制の監視・障害対応: サービスによっては、夜間や休日でもシステムトラブルが発生すれば対応が必要になる場合があります。
- プレッシャー: システムが停止すれば、企業の事業やユーザーに大きな影響が出るため、常に安定稼働させるという大きな責任とプレッシャーがあります。
- 継続的な学習: IT技術の進化が速いため、常に新しい知識やスキルを学び続ける必要があります。
- 地味な作業: 派手さはない裏方の仕事が多く、ルーティンワークも含まれるため、人によっては地味に感じるかもしれません。
まとめ:インフラエンジニアはITを動かす「縁の下の力持ち」
インフラエンジニアは、普段は目立たないけれど、私たちが快適にITサービスを利用するために欠かせない、非常に重要な仕事です。まるで、ビルを建てる際の基礎工事や、電気・ガス・水道の配管工事のように、ITシステムを動かすための土台を築き、守っています。
もし、あなたが「世の中を支える仕事がしたい」「地道な作業も苦にならない」「論理的に考えるのが好き」「新しい技術を学ぶのが好き」と感じるなら、インフラエンジニアは非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
未経験から挑戦できる求人もあり、これからのIT社会を支えるやりがいのある仕事です。ぜひ、インフラエンジニアの世界を覗いてみてください。
用語解説
- ITインフラ(IT Infrastructure): 情報技術(IT)の基盤となる設備やシステムのこと。具体的には、サーバー、ネットワーク機器、ストレージ、データベース、OS、ミドルウェアなどを含む。
- サーバー(Server): ネットワーク上で他のコンピューター(クライアント)からの要求に応じ、データやサービスを提供するコンピューターやプログラム。ウェブサイトの表示やメールの送受信、アプリの機能提供などに使われる。
- ネットワーク(Network): コンピューターやデバイス同士を接続し、データ通信を可能にする仕組みや機器の総称。インターネットや社内LANなどがこれにあたる。
- データベース(Database): 構造化された情報を効率的に保存・管理し、必要に応じて取り出せるように設計された情報の集合体。顧客データや商品情報などが管理される。
- OS(Operating System): オペレーティングシステムの略。コンピューターの基本的な動作を管理するソフトウェア。Windows、macOS、Linuxなどが代表的。
- Webサーバー(Web Server): ウェブサイトのデータ(HTMLファイル、画像など)を保管し、ユーザーのブラウザからのリクエストに応じてそれらを送信するサーバーソフトウェア。
- クラウド技術(Cloud Computing): インターネット経由で、サーバーやストレージ、ソフトウェアなどのITリソースを必要な時に必要なだけ利用できるサービス形態。AWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)などが有名。
- データセンター(Data Center): サーバーやネットワーク機器などのITインフラを集中して設置・管理するための施設。安定した電力供給、冷却システム、セキュリティ対策などが施されている。
- ルーティンワーク(Routine Work): 毎日、毎週など、決まったサイクルで繰り返し行う定型的な業務。
- 脆弱性(Vulnerability): コンピューターシステムやソフトウェア、ネットワークにおいて、設計上の欠陥やプログラムのバグなどが原因で発生する、情報漏洩や不正アクセスなどのセキュリティ上の弱点。
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