私たちが普段使っているスマホアプリ、オンラインショッピングサイト、銀行のATM、会社の業務システムなど、世の中には様々なITシステムがありますよね。これらのシステムがどのように作られ、動いているのか、気になったことはありませんか?
実は、これらのITシステム開発の中心で「司令塔」のような役割を担っているのが、「システムエンジニア(SE)」と呼ばれる人たちなんです。
「システムエンジニアって、プログラマーとどう違うの?」「どんなことをするの?」
今回は、システムエンジニアという仕事について、初めて知る方にも分かりやすく、その役割や仕事内容、そしてどんなやりがいがあるのかを解説していきます。
システムエンジニア(SE)って何?
システムエンジニア(SE)は、ITシステムの開発において、お客様の要望を聞き、どんなシステムが必要かを考え、その設計図を作り、開発チームをまとめ上げる「ITシステム開発の司令塔」のような役割を担います。
しばしばプログラマーと混同されがちですが、それぞれの主な役割は異なります。
- システムエンジニア(SE): お客様の課題をヒアリングし、その解決策として最適なシステムを「設計」し、開発プロジェクト全体を「管理」するのが主な仕事です。プログラミングを行うこともありますが、その比重はプログラマーほど高くありません。
- プログラマー(PG): システムエンジニアが作成した設計書に基づいて、実際にコンピューターが理解できる「プログラムコード」を書くのが主な仕事です。
例えるなら、システムエンジニアは「家の設計士」や「工事現場の監督」で、プログラマーは「大工さん」といったイメージです。
システムエンジニアの主な仕事内容
システムエンジニアの仕事は、ITシステムの企画から完成、そしてその後の改善まで、幅広いフェーズにわたります。
1. 企画・要件定義:お客様の「困った」をITで解決する
システム開発の最も最初のステップです。
- お客様の課題ヒアリング: お客様が「何に困っているのか」「どんなことを実現したいのか」を徹底的に話し合い、課題や要望を具体的に聞き出します。例えば、「顧客管理が煩雑で時間がかかる」といった困りごとに対して、「顧客情報を一元管理できるシステムを作りましょう」といった提案を行います。
- 要件の明確化: ヒアリングした内容を基に、「このシステムではどんな機能が必要か」「誰がどのように使うのか」「どれくらいの性能が必要か」といった、システムに求められる具体的な機能や性能を明確にしていきます。これが「要件定義」です。
2. 設計:システムの「設計図」を描く
要件定義で決まった内容を基に、システムの具体的な設計図を作成します。
- 基本設計: システムの全体像や、各機能がどのように連携するかといった大まかな設計(システムの骨組み)を行います。ユーザーがシステムを使う際の画面イメージなども作成します。
- 詳細設計: 基本設計をさらに掘り下げ、プログラムがどのように動作するか、データベースの構造はどうするかなど、プログラマーがコードを書けるレベルまで細かく設計します。
3. 開発・テスト:プロジェクトを「管理」し、品質を「保証」する
設計図が完成したら、いよいよ開発フェーズに入ります。SEは主に開発の進捗管理や品質管理を担います。
- 進捗管理: プログラマーチームの作業状況を管理し、スケジュール通りに開発が進んでいるかを確認します。遅延があれば、その原因を探り、対策を立てます。
- 品質管理・テスト: 開発されたシステムが設計通りに動くか、バグ(不具合)がないかなどをテストします。テスト計画の作成や、テスト結果の評価もSEの重要な役割です。
- プログラミング(場合によっては): 大規模なプロジェクトではプログラミングはプログラマーが担当しますが、SE自身も一部のプログラミングや、プログラマーへの技術的な指示を行うことがあります。
4. 運用・保守・改善:システムを「育て」、長く「活用」してもらう
システムが完成し、お客様に引き渡された後も、SEの仕事は続きます。
- 運用・保守: システムが問題なく稼働しているか監視したり、トラブルが発生した際に原因を究明し、解決したりします。システムが安定して動くようにメンテナンスも行います。
- 改善提案: システムの利用者からのフィードバックや、新しい技術の登場に合わせて、システムの改善や機能追加を提案します。
システムエンジニアのやりがいと大変なこと
やりがい
- お客様の課題を解決する喜び: 自分が設計・開発に携わったシステムが、お客様の業務を効率化したり、新しい価値を生み出したりするのを見たときに、大きな達成感とやりがいを感じられます。
- ITの知識とスキルが身につく: 幅広いIT技術に触れ、システム開発の全体像を理解できるため、着実にスキルアップできます。
- チームをまとめる面白さ: プロジェクトの司令塔として、多くのメンバーと協力し、一つのものを作り上げる面白さがあります。
- 社会貢献の実感: 私たちの身の回りにある様々なITサービスを支えているという、社会貢献の実感を得られます。
大変なこと
- コミュニケーション能力の重要性: お客様の要望を正確に聞き出し、開発チームに伝えるには高いコミュニケーション能力が必要です。時には板挟みになることもあります。
- 納期と品質のプレッシャー: 決められた納期までに高品質なシステムを完成させるというプレッシャーは常に伴います。
- 継続的な学習: IT技術の進化が速いため、常に新しい知識やトレンドを学び続ける必要があります。
- 残業や休日出勤: プロジェクトの状況によっては、残業が増えたり、システムリリース前などは休日出勤が発生したりすることもあります。
まとめ:システムエンジニアはIT社会を創造する仕事
システムエンジニアは、単にコンピューターを操作するだけでなく、お客様の課題を深く理解し、それをITの力で解決するための「企画力」「設計力」「マネジメント力」が求められる仕事です。
人とのコミュニケーションを大切にし、論理的に物事を考え、新しい技術に興味がある方には、非常に魅力的な職種と言えるでしょう。
未経験からシステムエンジニアを目指す方も多く、ITの知識を基礎から学びながら、社会に貢献できるやりがいのある仕事です。ぜひ、システムエンジニアという選択肢を考えてみてください。
用語解説
- ITシステム(Information Technology System): コンピューターやネットワーク、ソフトウェアなどを組み合わせて、特定の業務や目的を達成するための仕組み全般を指します。
- システムエンジニア(SE): ITシステムの企画、設計、開発管理、運用など、システム開発プロジェクト全体を統括する役割を担う技術者。
- プログラマー(PG): システムエンジニアが作成した設計書に基づき、実際にコンピューターが解釈できるプログラムコードを記述する技術者。
- 要件定義(Requirements Definition): システム開発の最初の段階で、お客様の要望や課題を明確にし、システムに何が必要かを定義する工程。
- 設計(Design): 要件定義で明確になった内容に基づき、システムの具体的な構造や機能、画面構成などを計画・図式化する工程。基本設計と詳細設計に分かれる。
- 開発(Development): 設計書に基づいて、プログラマーがプログラムコードを記述し、システムを実際に構築していく工程。
- テスト(Testing): 開発されたシステムが設計通りに動作するか、不具合(バグ)がないかを確認する工程。
- 運用(Operation): 完成したシステムが問題なく稼働し続けるように、日常的な監視や管理を行うこと。
- 保守(Maintenance): システムに発生した不具合を修正したり、機能改善を行ったり、システムの安定稼働を維持するための作業全般。
- バグ(Bug): プログラムやシステムに存在する不具合や欠陥のこと。
- 納期(Delivery Date): プロジェクトやタスクの完了期限のこと。
- IT(Information Technology): 情報技術の略。コンピューターや通信技術を使って情報の処理、保管、伝達を行う技術全般を指す。
コメント