「あれ言ったよね?」「なんでやってないの?」
この言葉を部下に投げかける上司は、部下からすると「後出しジャンケンの天才」に見えています。
指示は曖昧だったのに、失敗した後になって「自分は正解を知っていた(伝えていた)」かのように振る舞う。
このタイプの上司の下では、部下は「どうせ何をしても文句を言われる」と諦め、心を閉ざします。
一方で、部下がついてくる上司は、同じ状況で全く違う言葉を使います。
「指示出し」と「確認」のフェーズにおける、決定的な違いを具体的に解説します。
1. 指示の出し方: 「察してくれ」vs「ゴールを握る」
「あれ言ったよね?」と言う上司は、そもそも最初の指示が欠陥だらけです。
- ついてこない上司(エスパー強要型)
- 指示: 「これ、いい感じにお願い」「早めにやって」と曖昧な言葉を使う。
- 心理: 「1言えば10わかるのが優秀な部下だ」と勝手に期待している。
- 結果: 部下が悩みながら作成した成果物を見て、「違うよ、ここはこうするって言ったよね?(言っていない)」と後出しで修正させる。
- ついてくる上司(合意形成型)
- 指示: 「来週の会議で使うから、水曜の15時までに、この3つの数字を入れた資料を作って」と「期限」と「完成イメージ」を明確にする。
- 確認: 最後に「認識にズレがないか、復唱してみて」と確認し、ズレをその場で潰す。
- 結果: 部下は迷わず作業でき、手戻りが起きない。
2. 進捗確認: 「監視」vs「障害除去」
「あれどうした?」と聞くタイミングと目的が全く違います。
- ついてこない上司(時限爆弾型)
- タイミング: 期限ギリギリや、部下が失敗しそうになった瞬間に「あれどうなってる?」と聞く。
- 目的: 「サボっていないか」の監視と、「できていなかった時に詰めるため」の粗探し。
- 部下の反応: 「ヤバい、まだ終わってない…怒られる」と萎縮し、悪い報告を隠すようになる。
- ついてくる上司(伴走型)
- タイミング: 着手した直後や、中間のタイミングで「順調? 何か困ってることない?」と聞く。
- 目的: 部下が抱えている「障害(邪魔なもの)」を取り除くため。
- 部下の反応: 「実はここのデータが取れなくて…」と早めに相談でき、大事故になる前に軌道修正できる。
3. ミス発生時: 「犯人探し」vs「仕組み直し」
「言ったよね?」という言葉が出るのは、ミスが起きた時です。ここで本性が露呈します。
- ついてこない上司(記憶改ざん・責任転嫁)
- 発言: 「俺、前に言ったよね? メモ取らなかったの?」
- 思考: 自分の伝え方が悪かった可能性は1ミリも疑わず、「部下の記憶力や能力が低いせい」にする。たとえ本当に言っていなくても、「俺の脳内では言った」ことになっている。
- 結末: 部下は「言質を取られないようにしよう」と、録音や議事録作成に必死になり、仕事の本質から離れていく。
- ついてくる上司(自責・未来志向)
- 発言: 「伝わっていなかった私の責任だね。次はどうすればミスが防げるか、仕組みを考えよう」
- 思考: 「伝わっていない=言っていないのと同じ」と考える。「言った言わない」の水掛け論は無駄だと知っている。
- 結末: 「次はチェックリストを作ります」「メールで依頼を残します」と、建設的な改善が進む。
決定的な違いは「想像力」の欠如
「あれ言ったよね?」「あれどうした?」を連発する上司に共通しているのは、「相手の立場への想像力」が欠如している点です。
- 部下が今、どれくらいタスクを抱えているか想像しない。
- 自分の曖昧な言葉が、どう解釈される可能性があるか想像しない。
- それを言われた部下が、どれほど理不尽な気持ちになるか想像しない。
部下がついてくる上司は、「自分の言葉は、正しく伝わっていないかもしれない」という前提でコミュニケーションを取ります。
もしあなたが上司の立場で、部下に「あれ言ったよね?」と言いたくなったら、グッと飲み込んでこう言い換えてみてください。
「指示の出し方が曖昧だったかもしれない。今後はどうすれば伝わりやすいかな?」
その一言が言えるかどうかが、リーダーとしての分かれ道です。

