「最近、『BaaS』って言葉を耳にするけど、SaaSとはどう違うんだろう?」
「『〜as a Service』って、色々な種類があるみたいだけど、よく分からない…」
IT業界やビジネスのニュースを見ていると、「SaaS(サース)」以外にも、「PaaS(パース)」「IaaS(イアース)」、そして今回ご質問のあった「BaaS(バース)」など、「〜as a Service」という言葉をたくさん目にしますよね。これらは全て、インターネットを使ったサービスの新しい形を示しています。
今回は、「BaaS」がどんなものなのかを解説し、さらに代表的な「〜as a Service」のモデルを分かりやすくご紹介します。
1. BaaS(バース)とは? アプリ開発を楽にする「バックエンド支援」
BaaSとは、「Backend as a Service(サービスとしてのバックエンド)」の頭文字を取った略語です。
これは主に、スマートフォンアプリやWebアプリケーションを開発する人(開発者)向けのサービスです。アプリを作る際、ユーザーが直接触れる画面(フロントエンド)以外にも、裏側でデータを保存したり、ユーザーを認証したり、プッシュ通知を送ったりする「サーバー側の機能(バックエンド)」が必要です。
BaaSは、このアプリの裏側で動く共通の機能(バックエンド)を、サービスとして提供してくれる仕組みです。
- 何ができる?:
- ユーザー認証機能(ログイン・会員登録など)
- データベース(ユーザーデータやコンテンツの保存)
- ファイルストレージ(写真や動画の保存)
- プッシュ通知機能
- SNS連携機能
- なぜ便利?: 開発者は、これらの共通機能を自分で一から開発したり、サーバーを管理したりする必要がありません。BaaSを使うことで、アプリ開発の時間を大幅に短縮し、フロントエンド(アプリの見た目や操作性)の開発に集中できるようになります。
- 例えるなら: アプリ開発者が料理を作るとして、BaaSは「冷蔵庫の中の食材管理」や「コンロの火加減調整」といった、裏方の面倒な作業を代わりにやってくれるサービス、というイメージです。
2. 「〜as a Service」(XaaS)って他にもある? はい、たくさんあります!
BaaSだけでなく、「〜as a Service」という形のサービスは、ITの様々な分野で広がっています。これらを総称して「XaaS(エックスアズアサービス)」と呼ぶこともあります。「X」は「何か特定の機能やリソース」を指します。
その中でも、特に重要でよく使われる3つのモデルをご紹介します。これらは、ITサービスの「提供範囲」の違いで理解すると分かりやすいです。
a. SaaS(サース):ソフトウェアを「借りて使う」サービス(提供範囲:アプリケーション)
SaaSは、「Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)」です。 これは、完成されたソフトウェア(アプリケーション)を、インターネット経由で利用するサービスのこと。自分のパソコンにインストールする必要がなく、Webブラウザやアプリからアクセスして使います。
- どんな人が使う?: 一般ユーザー、ビジネスユーザー
- 具体例: Gmail, Salesforce, Zoom, Slack, Microsoft 365 (Web版), freee など
- 例えるなら: 完成した料理(アプリ)をレストラン(サービス提供者)で食べるようなイメージ。自分で食材を用意したり調理したりする必要がありません。
b. PaaS(パース):アプリ開発の「プラットフォーム」を借りるサービス(提供範囲:プラットフォーム)
PaaSは、「Platform as a Service(サービスとしてのプラットフォーム)」です。 これは、アプリケーションを開発・実行・管理するための「プラットフォーム(基盤)」を、インターネット経由で利用するサービスです。開発者は、サーバーやOSの管理を意識することなく、自分の作ったプログラムコードを動かすことができます。
- どんな人が使う?: アプリケーション開発者
- 具体例: Google App Engine, Heroku, AWS Elastic Beanstalk など
- 例えるなら: 食材(プログラムコード)だけ用意すれば、調理器具やキッチン(プラットフォーム)は全て揃っていて、料理に集中できるようなイメージ。
c. IaaS(イアース):ITの「インフラ」を借りるサービス(提供範囲:インフラ)
IaaSは、「Infrastructure as a Service(サービスとしてのインフラストラクチャ)」です。 これは、ITシステムの土台となる「インフラ(仮想サーバー、ストレージ、ネットワークなど)」を、インターネット経由で利用するサービスです。開発者は、OSやアプリケーションを自分でインストールし、自由に設定できます。
- どんな人が使う?: システム管理者、インフラエンジニア、アプリケーション開発者(より自由度を求める場合)
- 具体例: AWS EC2, Google Compute Engine, Microsoft Azure Virtual Machines など
- 例えるなら: キッチンの場所、水道、電気(インフラ)だけ借りて、調理器具や食材(OSやアプリ)は自分で用意するようなイメージ。最も自由度が高い分、自分で管理する範囲も広いです。
BaaSとPaaSの関係は?
BaaSは、PaaSの一種であり、特定のアプリケーションのバックエンド機能に特化したPaaSと考えることができます。PaaSがより汎用的な開発環境を提供するのに対し、BaaSは「これさえあればアプリのバックエンドは大丈夫」という、より特化した機能群を提供している、という違いです。
まとめ:「所有」から「利用」へ、ITの進化形
「〜as a Service」のモデルは、ITリソースを「所有する」のではなく、「必要な時に、必要な分だけ利用する」というクラウド時代の考え方を象徴しています。これにより、企業は初期費用を抑え、運用管理の負担を減らし、より柔軟かつスピーディーにビジネスを展開できるようになりました。
SaaS, PaaS, IaaS, BaaS…それぞれの違いを理解することで、現代のITサービスの全体像がよりクリアに見えてくるはずです。